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会長声明・決議

非司法競売手続の導入に反対する会長声明

現在法務省において、裁判所が関与しない民間オークションで競売手続を行う「非司法競売手続」の導入が検討され、省内の競売制度研究会では、意見の最終とりまとめに入っているという。

当会は「非司法競売手続」は導入の必要がなく、またその手続には重大な問題点が存するため、これに反対する。

まず、現行の不動産競売手続は、迅速的確な競売の進行をはかり、競売妨害を排除するため、法改正や運用改善が行われた結果、不動産競売事件の約4分の3が半年以内に売却実施処分に付され、売却率も全国平均で80パーセントを超え、大阪地裁、東京地裁では100パーセントに近い実情にある。このように、現行競売制度には大きな問題はなく、それを大きく変更しなければならない理由は存在しない。

検討されている「非司法競売手続」には、いくつかの案があるものの、案には、裁判所の関与が無く、現況調査報告書・評価書・物件明細書のいわゆる三点セットを作成せず、売却価格の下限制限を設けないというもの、これらのいくつかを取り入れるものがある。

裁判所による手続であって、三点セットが作成され、売却価格に下限が設けられていることは、現行の競売制度の重要な骨格であり、これらをなくすことで、競売の各方面の関係者に大きな危険と損害を及ぼすおそれがある。

三点セットがなければ、買い受け人は、物件についての重要で基本的な情報が得られず多大な買い受けリスクを負うことになり、リスク負担能力や調査能力のない一般市民が競売に参加することは極めて困難となる。

売却価格の下限制限がなければ、物件が不当に低価格で売却される可能性が高くなる。担保物件の売却後は債務者や保証人に残債務を請求しないノンリコースローンが普及しているアメリカと事情を異にする日本では、それにより、債務者、保証人の利益を害するとともに、低価格売却は物件所有者の利益を害する。仮に「非司法競売手続」によるには、融資時の債務者、所有者の同意を要件とするとしても、融資時の力関係を考えるならば、とうてい歯止めとはならない。

そして、そもそも、手続に裁判所の関与がない「非司法競売手続」の場は、手続の適正が確保されにくいおそれがあり、反社会的勢力による不当な利益獲得の場となる可能性が高い。

よって当会は、「非司法競売手続」の導入に強く反対するものである。

2008年(平成20年)3月11日

滋賀弁護士会 会長 元永佐緒里