滋賀弁護士会について

会長決議・声明

特定秘密保護法案に反対する会長声明

政府は、2013(平成25)年10月25日、「特定秘密の保護に関する法律(案)」(以下、「本件法案」という。)を国会に提出した。


当会は、本年1月17日付「秘密保全法制定に反対する会長声明」において、秘密保全法制定に強く反対する旨の意見を表明した。すなわち、①新法制定の必要性を支える立法事実がないこと、②保護対象となる「特別秘密」の範囲が広範かつ曖昧である上、行政機関による秘密指定の適正性をチェックする仕組みが無く、(主権者たる)国民の知る権利を損なうこと、③秘密保全法違反により起訴される被告人が、適正な手続きにより裁判を受ける権利が十分に保障されないこと、④適性評価制度導入により、特別秘密取扱者本人のみならず、その周辺者のプライバシーや思想・信条の自由までが侵害されることの4点を指摘し、法案作成の即時中止を求めたところである。


しかるに、政府は、その後も秘密保全法制定作業を進め、9月26日、本件法案の概要を公表し、その後実施したパブリックコメントに寄せられた約9万件の意見の内、約77%がこれに反対するものであったにもかかわらず、閣議決定の上、本件法案を国会に提出した。


さて、本件法案においても、前記会長声明において指摘した問題点は全く解消されていない。

特に、「特定秘密」として指定できる事項を列挙した「別表」は概括的網羅的な記載となっており、行政機関の長らが秘密指定できる事項の範囲は広範かつ曖昧なままである。

また、秘密指定の適正性をチェックする仕組みも無い。この点、本件法案第18条第1項は、「特定秘密の指定及びその解除・・・の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定める」としているが、同項により定められる基準は、同条2項の有識者の意見聴取を経てもなお抽象的なものとならざるを得ず、秘密指定が可能な範囲の明確化に資する面は乏しく、行政機関の長らの指定の適正性を保障するものでもない。

また、本件法案でも、処罰対象は広範であり、故意の漏えい行為や特定秘密の取得行為(これらの未遂を含む。)に限られず、過失の漏えい行為、更には、漏えい行為や特定秘密の取得行為の共謀、教唆、扇動にまで及んでおり、共謀、教唆、扇動罪の成立には実行行為の着手すら不要となっている。このような本件法案の処罰範囲の広範さは、保護対象となっている特定秘密の範囲の広範かつ曖昧さと相まって、国民の知る権利や報道・取材の自由に対して極めて深刻な萎縮効果を及ぼすものとなっている。

なお、政府は、国会提出前に、本件法案に、この法律の拡張解釈による国民の基本的人権の「不当」な侵害を禁止し、報道等に従事する者の取材行為については、「法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限り・・・正当な業務」と認めるなどとした規定を設けたが、抽象的な理念を明文化したところで、当不当の判断は、まずは行政機関たる捜査機関が行うものである以上、上記の萎縮効果が払拭されることはない。


当会も、政府には国家の安全保障上国民に秘匿すべき国家秘密があることを否定するものではない。しかし、国民は、必要な情報を得て初めて、主権者として、国の政治のあり方を決め、実行することが可能となるため、国家秘密の秘匿は、常に、国民主権ないし議会制民主主義との間で緊張をはらむことになる。従って、国家秘密の指定と解除のあり方に関する制度設計は、徹底的かつ慎重に検討されなければならない。

しかるに、本件法案には、上記のとおり、秘密指定により国民に秘匿できる事項を広範に認めるとともに、秘密指定の適正性につきチェックする仕組みを持たないため、行政機関の長らの恣意的な判断により、政府にとって国民に知られたくない情報を、「特定秘密」と偽って、国民に知らせないでおくことを可能とする欠陥を有する。しかも、特定秘密の提供は、国権の最高機関であり、国民の代表として行政を監視する立場にある国会に対してすら限定的かつ任意のものとなっている。かくては、本件法案は、国民主権ないし議会制民主主義の根幹を揺るがすものと評価せざるを得ない。


以上のとおりであるから、当会は本件法案の立法化について、断固反対する。

2013(平成25)年11月14日

滋賀弁護士会
会長 甲津貴央