滋賀弁護士会について

会長決議・声明

商品先物取引の不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明

不招請勧誘とは、業者が、消費者から勧誘の要請がないのに、訪問や電話により、一方的に勧誘を行うことをいう。商品先物取引法は、商品先物取引業者が不招請勧誘を行うことを原則として禁止している。

わが国では、証券・金融商品に関する金融商品取引所と商品先物取引に関する商品取引所とが別個に存在しているが、これらを統合して総合取引所を実現するための制度整備が行われている。

これまで、証券・金融商品については、金融商品取引法で規制されており、不招請勧誘禁止の範囲は、店頭取引(証券会社と顧客が相対で取引するもの)の場合のみであるのに対し、商品については、商品先物取引法で規制され、不招請勧誘禁止の範囲は、店頭取引及び取引所取引(投資家の売り注文と買い注文を取引所に集めて売買を成立させるもの)に及んでいた。

ところが、2012(平成24)年9月に成立し、本年3月に施行された改正金融商品取引法では、商品に係るデリバティブ取引を金融商品取引所において取り扱えることとされ、当該商品は「金融商品」と位置づけられ、金融商品取引法により規制されることとなった。今回の改正では、不招請勧誘禁止に関して規定している金融商品取引法第38条第4号は改正されず、不招請勧誘禁止の具体的範囲については同法施行令で定められることになっており、現在、同法施行令の整備がなされている。

これまでは、商品先物取引の方が、取引所取引を含む点で、証券・金融商品よりも不招請勧誘禁止の範囲が広かったが、金融商品取引法の改正によって、商品についても同法が規制することになり、同法施行令を改正しなければ、商品についての不招請勧誘禁止の範囲は、従来の証券・金融商品について規制されていた範囲(店頭取引のみ)まで狭くなってしまう。そのため、従来よりも不招請勧誘禁止の範囲が狭くならないように、取引所取引についても不招請勧誘禁止の範囲に含めるよう同法施行令を改正する必要がある。すなわち、同法施行令を改正して、不招請勧誘が禁止される取引(金融商品取引法施行令第16条の4)に商品先物取引(商品関連市場デリバティブ)を加えなければ総合取引所に上場する商品先物取引については、不招請勧誘禁止規制が撤廃されることになってしまう。

この点、2013(平成25)年6月19日、内閣府副大臣が、衆議院経済産業委員会において、総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、委員の質問に対し「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁を行った。これは、総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有することとなった金融庁が、総合取引所に関する法規制について、不招請勧誘禁止規制を撤廃する方向での検討を進めていることを示すものであるが、到底看過することはできない。

商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制は、商品先物取引業者が、不意打ち的な勧誘や執拗な勧誘により、顧客の本来の意図に反した取引に引き込み、多くの被害を生んできたという歴史的事実を踏まえ、消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望が積み重ねられた結果、2011(平成23)年1月施行の商品先物取引法により、ようやく実現したものである。そして、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制の導入以降、商品先物取引に関する苦情件数は激減しており、不招請勧誘禁止こそが商品先物取引被害撲滅の切り札であったということができる。

政府は、商品先物取引の出来高が大幅に減少していることを懸念し、その市場活性化対策として、商品先物取引に関する不招請勧誘禁止規制を撤廃しようとしている。しかし、内閣府消費者委員会は、2013(平成25)年11月12日付け意見書において、「不招請勧誘禁止規制の存在によって市場の活性化が阻害されるとは言えないことが明らかである」と分析しており、市場活性化対策は不招請勧誘禁止規制を撤廃する理由にはならないというべきである。そもそも、不招請勧誘禁止規制の導入から僅か3年余でこの規制を撤廃することになれば、知識経験が十分ではない個人投資家が取引に巻き込まれ、以前と同じく、商品先物取引業者に消費者被害を多数生み出す機会を与えることになりかねず、総合取引所において従前と同様の被害が発生する可能性が高まるとの重大な懸念がある。

よって、当会は、消費者保護の観点から、総合取引所において取り扱う商品先物取引について不招請勧誘禁止規制を撤廃することに強く反対するとともに、金融商品取引法施行令を改正して、不招請勧誘禁止規制の対象に商品先物取引(商品関連市場デリバティブ)を加えるよう強く求める。

2014(平成26)年3月19日

滋賀弁護士会
会長 甲津貴央