滋賀弁護士会について

会長決議・声明

「商品先物取引法施行規則」及び「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針」改正案に対する意見書

2014(平成26)年4月25日

農林水産省食料産業局商品取引グループ 御中
経済産業省商務流通保安グループ商取引・消費経済政策課 御中
経済産業省商務流通保安グループ商取引監督課 御中

滋賀弁護士会
会長 近藤公人

当会は、2014(平成26)年4月5日にパブリックコメント手続に付された「商品先物取引法施行規則及び商品先物取引業者等の監督の基本的な指針の改正について」(案件番号595114027)に関し、以下のとおり意見を述べる。

第1 意見の趣旨

商品先物取引法施行規則第102条の2に関する改正案は、商品先物取引の不招請勧誘禁止規制を大幅に緩和しようとするものであり、かかる改正案に強く反対する。

第2 意見の理由
1

商品先物取引法施行規則第102条の2に関する改正案は、商品先物取引の不招請勧誘禁止の例外について、現在、当該業者がリスクの高い取引を既に継続的に行っている自社の顧客に対してのみに限定しているのを改めて、当該業者のみならず他の業者との間でも同種取引を行っていた場合にまで例外の範囲を拡大するとともに、熟慮期間等を設定した契約の勧誘(顧客が70歳未満でること、基本契約から7日間を経過し、かつ、取引金額が証拠金の額を上回るおそれのあること等についての顧客の理解度を確認した場合に限る)にも広く認めようとするものである。

しかし、このような内容の改正をすることは、個人顧客に対する商品先物取引の不招請勧誘を事実上解禁するに等しく、法律が個人顧客に対する無差別的な訪問勧誘・電話勧誘を禁止した趣旨を没却するものといわざるをえず、到底容認することはできない。

2

そもそも、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制は、商品先物取引業者が、不意打ち的な勧誘や執拗な勧誘により、顧客の本来の意図に反した取引に引き込み、多くの被害を生んできたという歴史的事実を踏まえ、消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望が積み重ねられた結果、ようやく、2009(平成21)年の商品取引所法改正により、実現したものである。

一昨年2月から6月にかけて開催された産業構造審議会商品先物取引分科会における議論において、不招請勧誘禁止規制を見直すことが議論されたが、2012(平成24)年8月21日付上記分科会報告書も、「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず、これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため、引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」、「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」とし、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制を維持することが確認されていたところである。然るに、それから間もない現時点において、何らの検証もなく、上記のような改正を行うことは極めて不適切である。

3

商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制の導入以降、商品先物取引に関する苦情件数は激減しており、不招請勧誘禁止こそが商品先物取引被害撲滅の切り札であったということができる。しかし、今日においても不招請勧誘禁止規制を潜脱する業者の勧誘により消費者が被害を受ける事例が、なお相当数報告されている。

上記のような改正がなされれば、知識経験が十分ではない個人投資家が取引に巻き込まれ、商品先物取引業者によって、従前と同様の消費者被害が多数生み出される可能性が高まるとの重大な懸念がある。

4

この点に関連して、「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針」を同時に改正し、そこで顧客保護の手当をすることも提案されている。しかし、年金等生活者への勧誘の禁止や習熟期間を経過しない者への勧誘の限定は、不招請勧誘禁止規制が実現する前のガイドラインの内容を一部復活させるものに過ぎない。商品先物取引被害は,年金等生活者を顧客とする場合に限らないし、また、習熟期間についても、投資可能資金額を過大に記載させて、過大な取引を勧誘する事例や、習熟期間が経過したとたん、取引証拠金を目一杯利用した過当な勧誘が行われる事例が過去多数みられていたことからすれば、これらは不招請勧誘禁止規制の代替策とはおよそなりえないものである。

5

当会は、2014(平成26)年3月19日、「商品先物取引の不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明」を発表し、総合取引所において取り扱う商品先物取引について不招請勧誘禁止規制を撤廃することに反対するとともに、金融商品取引法施行令を改正して、不招請勧誘禁止規制の対象に商品先物取引(商品関連市場デリバティブ)を加えることを求めている。内閣府消費者委員会も、2013(平成25)年11月12日付け意見書において、不招請勧誘禁止規制を維持する必要性や、不招請勧誘禁止規制が市場活性化を阻害しないとの分析を踏まえて、「商品先物取引における不招請勧誘規制を緩和すべきではない」と指摘し、さらに、2014(平成26)年4月8日付け意見書を公表して、「改正案は商品先物取引の不招請勧誘禁止規制を大幅に緩和し、事実上解禁するに等しいものである」としたうえで、「このような改正案が、消費者保護の観点から見て、重大な危険をはらむものであることに鑑み、かかる動向を看過することができず、深く憂慮し、その再考を求める」としている。

6

よって、当会は、消費者保護の観点から、商品先物取引法施行規則102条の2に関する改正案に強く反対する。

以上