滋賀弁護士会について

会長決議・声明

「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に属する国会議員らによって提出された「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(以下「本法案」という。)が、先の国会にて継続審議となった。

本法案は、カジノ施設を含む特定複合観光施設が、観光及び地域経済の発展に寄与すると共に財政の改善に資することを理由に、現在、刑法上の賭博罪に該当する行為として違法とされているカジノを合法化するとともに、カジノ施設を含む特定複合観光施設設置の推進を政府の責務とすることを内容とする。

しかし、現在違法とされている賭博であるカジノを合法化するような正当な理由はなく、本法案を容認することは到底できない。

そもそも、カジノ施設が設置されれば、①暴力団員その他不適当な者のカジノ施設に対する関与、②犯罪の発生、③風俗環境の悪化、④青少年の健全育成への悪影響、⑤入場者がカジノ施設を利用したことにより受ける悪影響等の様々な弊害発生が予見されるところである(本法案10条参照)。しかるに、本法案はこれらの弊害を予見しながら、その防止及び排除の具体策を何ら検討もしていない。

そして、厚生労働省が今年発表した報告書によれば、我が国におけるギャンブル依存症の推定有病率は、男性で8.8%、女性1.8%と極めて高く、潜在的なものを含めると、さらに多くのギャンブル依存症の患者が存在することが示されている。このようにギャンブル依存症の有病率が高い状況にもかかわらず、ギャンブル依存症患者の治療施設や相談機関の設置、社会的認知への取組みなど、ギャンブル依存症に対する予防や治療体制が不十分な状況である。

さらに、社会問題となっている多重債務問題の要因の一つとして、ギャンブルがあげられる。これまで、総量規制や金利規制を定めた貸金業法改正やこれに伴う多重債務者改善プログラムなどの対策の結果、多重債務者数も大幅に減少し、改善されてきたところである。しかし、カジノが解禁されれば、多重債務問題の再燃も大いに危惧されるところである。

また、カジノ解禁による経済効果が喧伝されているが、この点に関する客観的な検証はされていない。むしろ、カジノでの出費により多重債務に陥ったり、老後の資金等としての貯蓄が奪われることなどによる新たな経済的弱者が発生したり、増加するギャンブル依存症患者に対する様々な対策をする必要が生じる。このような対策に多額の税金を投入され、多額の社会的コストの発生も容易に予想されるところである。かかるカジノ解禁に伴う社会的コストをも考慮すると、これを上回る経済的効果が実際に存在するのか甚だ疑問である。

たとえカジノ解禁による何らかの経済効果が認められようとも、暴力団員らの関与、犯罪の発生、風俗の悪化、青少年への悪影響、ギャンブル依存症患者の増加、多重債務問題の再燃などの様々な弊害を招来する危険に鑑みれば、そのような経済効果を追い求めるべきではない。

以上のとおり、カジノを解禁することによる経済的観点からの合理性には疑問があり、賭博罪の保護法益を上回るものとは到底いえず、賭博であるカジノを合法化するような立法事実は存在しないといわざるをえない。

ところで、報道等によると、滋賀県から比較的近接した大阪府内において、カジノ解禁を睨んで、カジノの誘致ないし開設が計画されているという。もし、大阪府内にカジノが開設されると、滋賀県からもカジノを契機としてギャンブル依存症に陥る者や多重債務に陥る者が出るなど、県民にも影響が及ぶことが懸念される。

以上のとおり、刑法により禁止された賭博であるカジノを解禁し、推進する本法案について、当会は、ここに強く反対の立場を表明すると共に、本法案の速やかな廃案を求める。

2014(平成26)年10月9日

滋賀弁護士会
会長 近藤公人