滋賀弁護士会について

会長決議・声明

「平和安全法制」関連法案に反対する会長声明

「国際平和支援法案」及び自衛隊法や周辺事態安全確保法の改正案等の一連の「平和安全法制」関連法案が、現在、国会で審議されている。これらの法案は、以下に指摘するとおり、日本国憲法の立憲主義の基本理念及び憲法9条に違反する重大な問題を抱えている。当会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする弁護士の団体として、この法案に反対する。

1 立憲主義及び憲法9条に反すること

一連の「平和安全法制」関連法案(以下「本法案」という。)は、昨年7月1日の集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を法制化しようとするものである。

集団的自衛権は、日本が攻撃されていないにもかかわらず、他国に対して自衛隊が武力を行使するというものであって、武力の行使を放棄した憲法9条1項に違反する。これまで、自衛隊は、日本が攻撃を受けたときに、これを排除するために必要最小限度の実力を行使するにとどまることを理由に、憲法9条2項の戦力にあたらないと説明されてきた。ところが、集団的自衛権の行使を容認することになれば、もはやこの論理は維持できなくなり、自衛隊は憲法9条2項が禁じている「戦力」であることを否定できず、その武力の行使は同項が否認している「交戦権」の行使となることから、憲法9条2項にも違反する。

集団的自衛権の行使が憲法上認められないことは、60年以上にわたって政府自身が繰り返し確認してきた、確立された憲法解釈である。にもかかわらず、こうした解釈を閣議決定で変更し、これを立法化することは、憲法改正手続によらずに実質的に憲法を改変するに等しい。これは、憲法によって権力に縛りをかけることで国民の自由・権利及び平和を守るという立憲主義に反するものである。

憲法学者の多くは、昨年の閣議決定や本法案が憲法違反である旨の意見を表明している。

加えて、衆議院の憲法審査会では、自民党が推薦した参考人を含め3人の憲法学者全員が「法案は違憲である。」旨を述べている。

また、昨年来、全国のすべての弁護士会が集団的自衛権の行使は憲法違反であることを指摘している。当会も、昨年5月28日には「憲法9条の解釈変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする動きに反対する決議」を、同年7月15日には「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」を発表したところである。

政府は、砂川事件の最高裁判決を根拠に、集団的自衛権の行使が合憲であると主張している。しかし、砂川事件最高裁判決は、憲法上、日本が集団的自衛権を行使できるなどとは全く述べていない。この判決は「在日米軍は外国の軍隊であって、日本が主体となって指揮・管理できない。だから在日米軍は憲法9条2項が保有を禁止している戦力にはあたらない」と判断したにとどまる。日本が攻撃を受けていない状況下で、自衛隊が実力を行使することを憲法が認めているなどと判示したものではないのである。砂川事件最高裁判決は、集団的自衛権の行使が合憲であることの理由にはならない。

以上のとおり、本法案は憲法9条に反するものであり、憲法改正手続によらず、違憲の法律を制定することは、立憲主義に反するものである。

2 「存立危機事態」概念の問題性

自衛隊法76条の改正案では、いわゆる「存立危機事態」にも、内閣総理大臣が自衛隊の出動を命じることができることとされている。そうなれば、同法88条によって自衛隊が武力を行使できることになる。

しかし、武力の行使を可能とする「存立危機事態」とはどのようなものであるかが、一連の法案でも、政府の説明でも、なんら具体的に示されていない。自国が攻撃されていないのに、他国が攻撃されて日本の存立が脅かされる状況とはどのようなものか不明である。しかも、武力行使の地理的な限定もない。これでは、自衛隊の武力行使を有効に制約することができず、恣意的に適用される危険がある。

憲法9条1項は、日本が攻撃されていないにもかかわらず、他国に対して自衛隊が武力を行使することを認めていないのであり、自衛隊法76条の改正案は、憲法9条1項に違反するものである。

3 「重要影響事態」概念の問題性

本法案の一つである「重要影響事態に際しての我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」は「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」を「重要影響事態」と定義し、重要影響事態に該当するときは、地理的な制約なく、船舶検査活動、後方支援活動、捜索救助活動を可能にするとしている。

我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態という文言はあまりに漠然としており、恣意的に適用される危険がある。

また後方支援活動には、他国軍に対する兵站活動も含まれている。兵站活動は他国の武力行使と一体化した活動であるし、相手国からの攻撃を招く危険性が高い活動である。いまだ日本が直接に武力攻撃を受けていない状態で、他国軍と一体化してこのような活動を行うことは、自衛隊への武力攻撃を招来し、これに対する反撃を余儀なくされる結果、自衛隊の海外での武力行使へ道を開くものとして、憲法9条1項に違反するものである。

4 国際平和支援法案による自衛隊海外派遣法制の恒久法化の問題性

国際平和支援法案は、「国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの」を「国際平和共同対処事態」と定義し、国際平和共同対処事態に該当するときは、自衛隊が諸外国の軍隊等に対して協力支援活動等を行うことができるようにするものである。

これまでのように個別法を作らずに、自衛隊の海外派遣を広範に認めるようにすることは、世界各地で日常的に自衛隊が武器の使用の危険性に直面することを意味する。

憲法は、あくまでも武力を背景としない国際関係を希求するものであって、武器を携えた自衛隊が、日常的に世界各地で活動するようなことを想定していない。


以上のとおり、本法案は、日本国憲法の立憲主義の基本理念及び憲法9条に違反する。当会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする弁護士の団体として、この本法案に反対する。

2015(平成27)年7月14日

滋賀弁護士会
会長 中原淳一