滋賀弁護士会について

会長決議・声明

湖東事件再審開始についての会長声明

2019(平成31)年3月18日,最高裁判所第二小法廷は,いわゆる湖東事件の第2次再審請求事件(請求人西山美香氏)について,検察官の特別抗告を棄却する決定をした。


本件は,2003(平成15)年5月22日,滋賀県愛知郡湖東町(当時)所在の湖東記念病院に看護助手として勤務していた西山氏が,同病院に慢性呼吸不全等の重篤な症状で入院中であった患者(当時72歳)に装着された人工呼吸器のチューブを引き抜いて酸素供給を遮断し,急性低酸素状態に陥らせて殺害したとされた事件である。


西山氏は,捜査段階で自白をしたが,公判では否認に転じ,その後は一貫して無罪を主張してきたものの,2005(平成17)年11月29日,大津地方裁判所は懲役12年の有罪判決を言い渡し,2007(平成19)年5月21日に最高裁判所で同判決は確定した。


西山氏は,再審手続の中で,患者の死因や自白の信用性を争い,2017(平成29)年12月20日,大阪高等裁判所は,新旧証拠を総合的に評価し,①患者が他の死因で死亡した可能性があること,②自白についても,その変遷から体験に基づく供述ではないとの疑いがあり,西山氏が捜査官の誘導に迎合した可能性があることから,患者が自然死した合理的疑いが生じたとして再審開始を決定した。


今回の決定は,検察官の特別抗告における主張が,いずれも刑事訴訟法第433条の抗告理由に当たらないとして,裁判官の全員一致で特別抗告を棄却し,大阪高等裁判所の原決定を確定させたものであって,当会としてもこれを高く評価する。


西山氏は,2004(平成16)年7月に逮捕され,2017(平成29)年8月に出所するまで、13年以上にわたって自由を奪われるとともに,殺人犯の濡れ衣を着せられた。同年12月に前記再審開始決定が出たものの,検察官による特別抗告によって再審公判の開始が遅れ,西山氏の名誉は今も回復していない。

そもそも検察官は,本件において,特別抗告審が法律審であるにもかかわらず,本来抗告理由とはならない事実誤認を主張し,医師の供述調書や意見書等の証拠を多数提出して証拠調べを求め,再審開始決定の取消しを求めていた。このような検察官の態度は,再審公判の開始をいたずらに遅らせ,無辜の救済を理念とする再審制度の趣旨に反するものである。

検察官は,今回の決定を真摯に受け止め,再審公判において有罪の主張をすることなく,西山氏の再審無罪をすみやかに確定させるよう対応すべきである。


当会は,被疑者弁護をさらに充実させるとともに,取調べ全過程の可視化,取調べにおける弁護人立会い,証拠の全面的開示,再審開始決定に対する検察官の不服申立て禁止をはじめとする,えん罪の防止及びえん罪被害救済に向けた制度改革の実現に,さらに力を尽くす所存である。

2019(平成31)年3月27日

滋賀弁護士会
会長 片山 聡