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会長声明・決議

最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

   長期に及ぶ新型コロナウイルス感染症蔓延の影響とロシアのウクライナ侵攻の中で、食料品や光熱費など生活関連品の価格が急上昇している。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、大企業だけでなく中小・零細企業を含めたすべての労働者の実質賃金の上昇または維持を実現する必要があり、そのためにはまず最低賃金額を大きく引き上げることが重要である。

 また、依然として是正されていない最低賃金額の地域間格差の解消も重要な課題である。2022(令和4)年の最低賃金額は、最も高い東京都で時給1072円であるのに対し、最も低い10県では時給853円であり、その間には219円もの開きがある。滋賀県の最低賃金額は時給927円であり、東京都と比較して145円も低額に留まっている。
  最低賃金額の高低と人口の増減には強い相関関係があり、最低賃金額が低い地方の経済が停滞し、地域間の格差が縮まるどころかむしろ拡大している。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず都市部への一極集中からくる様々なリスクを分散する上でも極めて効果がある。

  地域別最低賃金額を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方の間でほとんど差がないという分析がなされている。これは、都市部以外の地域では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限され、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にある。
  この指摘は、滋賀県にも当てはまる。最も最低賃金額が高い東京都と比較して滋賀県の生計費が大幅に低いとは言えず、早急に地域間格差を是正すべきである。

  この点、厚生労働省の中央最低賃金審議会に設置された「目安制度の在り方に関する全員協議会」が本年4月6日にまとめた報告では、目安制度を維持し、現行のAないしDの4段階の目安区分を3段階とし、都道府県のランクの区切りの振り分けを変更することが提案されている。
  しかし、これではCランクの引上額をAランクの引上額より大幅に上回るものとするなど抜本的な方策でも採られない限り、地域間格差の迅速な解消は望めない。中央最低賃金審議会は、現行の目安制度が地域間格差を解消できなくなっていることを直視し、目安制度に代わる抜本的改正案として、全国一律制実現に向けた提言をなすべきである。

  最低賃金額引上げに伴う中小企業への支援策について、現在、国は業務改善助成金制度による支援を実施している。
  しかし、その支援は未だ十分とは言いがたい。最低賃金額を引き上げても、日本の経済を支えている中小企業が円滑に企業運営を行うことができるよう十分な支援策を講じることが必要である。

  例年、厚生労働大臣は6月頃に中央最低賃金審議会へ地域別最低賃金額の改定の目安についての諮問を行い、7月には同審議会から厚生労働大臣に対して答申がなされている。この答申を受け、各地の最低賃金審議会において当該地域別最低賃金額に関する審議がなされ、当該地域の労働局長によって最低賃金額が決定される。
  今年度も同様の流れが見込まれるが、当会は、中央最低賃金審議会に対し、本年度、全国すべての地域について、地域間格差の是正を図りつつ、最低賃金額の大幅な引き上げを答申することを求めるとともに、国に対して、最低賃金額の大幅な引き上げに当たり、業務改善助成金制度の改善や社会保険料の事業主負担部分の大幅な減免措置を講じるなど、中小企業に対する十分な支援策を講じることを求める。
  また、当会は、中央最低賃金審議会の答申がなされた後に審議が予定されている滋賀地方最低賃金審議会に対しても、以上のような状況を踏まえ、最低賃金額の大幅な引上げを図り、地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活を確保するよう求める。

2023(令和5)年6月14日
滋賀弁護士会         
会 長  中 井 陽 一